商品の他勘定振替|見本品・自家消費・贈与・火災の仕訳
商品を販売以外の目的で使ったり、火災で失ったりした場合に、その原価を売上原価から対応する費用・損失へ振り替える処理を解説します。見本品や贈答の払出しを、売上や原因不明の減耗と区別します。
執筆:LavaCount執筆者チーム
情報を確認した日:2026年10月28日
商品を販売以外の目的で使ったり、火災で失ったりした場合に、その原価を売上原価から対応する費用・損失へ振り替える処理を解説します。見本品や贈答の払出しを、売上や原因不明の減耗と区別します。
執筆:LavaCount執筆者チーム
情報を確認した日:2026年10月28日
見本品への使用、社内消費、贈答、火災など、販売以外の理由でも商品は減ります。減った数量だけでなくその使途を確かめ、販売した商品の原価とは別の勘定へ移します。
商品がなくなったこと自体は確認できても、販売収益が生じたとは限りません。また、使途が分かっている見本品の払出しを、原因不明の棚卸減耗としてまとめないことも重要です。
三分法で販売以外の商品払出しを処理する
見本品、事業上の自家消費、贈与、火災など、減少原因が特定できる取引を対象とします。
振替対象の原価が把握できる
販売価格ではなく、その商品の帳簿上の原価を使います。
決算整理前で、減少分が仕入原価に含まれている
本例の貸方は仕入です。期末商品等から既に減額済みの場合に重複して振り替えません。
費用科目・表示の条件を設例で指定する
贈答5,000円は交際費、火災25,000円は特別損失とします。個人事業主の私的引出しや税務上の扱いは対象外です。
三分法では、購入時の商品原価を仕入勘定へ記録します。その商品が販売以外に使われた場合は、減少時に仕入から見本品費、消耗品費、火災損失などへ振り替えます。
以下の自家消費は、会社の商品を事業上の消耗品として使うケースです。個人事業主が生活のために商品を持ち出す処理、役員等への給与に当たる取引、税務上のみなし譲渡は、このページの対象ではありません。
振り替えるのは、その商品の原価です。通常の販売価格や、売れたと仮定した場合の利益を加算しません。仕入諸掛が取得原価に含まれていれば、それを反映した払出原価を確認します。
売上原価 = 期首商品 + 当期仕入 - 販売以外の他勘定振替高 - 期末商品
これは、本ページで扱う販売以外の減少を含め、ほかの調整がない設例の式です。商品が受贈や事業譲受などで増えた場合の受入れは別の論点であり、この減少の式へ無条件に混ぜません。
期中:見本品への使用
ミニケース。営業用の見本品として原価12,000円の商品を使用し、見本品費へ振り替えます。
借方
貸方
損益計算書では、商品の原価計算から他勘定振替高を控除し、対応する別の表示区分へ移します。見本品費や事業用の消耗品費は、本例では販売費及び一般管理費とします。
火災損失は、本例では特別損失とする指定です。振り替えた原価を売上原価にも残すと、売上総利益が過少になるだけでなく、同じ原価を二度費用化する場合があります。
他勘定振替を正しく行うと、販売原価、別用途の費用・損失、期末商品を合わせた額が、期首商品と当期仕入の合計へ戻ります。
このページは教材にある他勘定振替の原価整理と損益表示を対象とします。災害の詳細な開示、保険金の認識、事業譲渡等の注記事項は、各取引の会計処理で扱います。「他勘定振替高」という原価計算上の区分だけで、原因となった取引の会計処理全体を済ませるものではありません。
他勘定振替後の仕入残高が資料に示されている場合、売上原価を計算するときにその振替高を再び控除しません。逆に、総仕入高が示されている場合は、対象原価を減らす必要があります。
また、火災で焼失した商品の原価を振り替えることと、保険金を請求・受領することは別の取引です。保険に入っているからといって、商品の減少を記録しないことにはなりません。
見本品として使用した商品を、売価で売上に計上する誤りがあります。本例は販売ではなく、商品原価を営業活動の費用へ移す取引です。
実地在庫が少ないという結果だけを見て、用途の分かる見本品や自家消費まで棚卸減耗とする誤りもあります。払出しの原因が分かるものは、それぞれの取引を記録してから帳簿と実地を照合します。
「売上原価・売上総利益」「商品売買・棚卸資産の総合計算」で、総仕入と他勘定振替後の仕入を区別します。このページでは、計算から除いた原価がどの費用・損失へ移るかを確認します。
期首商品30,000円、当期仕入370,000円、売上450,000円、期末商品70,000円です。当期中に、原価12,000円を見本品、8,000円を事業用消耗品、5,000円を取引先への贈答として使用し、25,000円を火災で失いました。
他勘定振替高は50,000円、売上原価は30,000円+370,000円-50,000円-70,000円=280,000円です。売上総利益は170,000円です。
贈答は交際費、見本品費・消耗品費と合わせて販売費及び一般管理費25,000円とします。ほかに営業費用がなければ営業利益は145,000円です。火災損失25,000円を特別損失とし、ほかの損益がなければ税引前利益は120,000円です。
原価配分の検算は、売上原価280,000円+見本品費12,000円+消耗品費8,000円+交際費5,000円+火災損失25,000円+期末商品70,000円=400,000円です。
払出しによって商品原価がどの費用・損失へ移ったかを追います。帳簿上の商品を減らした後に、決算整理でも同じ払出しをもう一度売上原価から控除すると二重調整になるため、既に処理した範囲を確認します。
三分法を採用し、決算整理前に原価4,000円、通常売価6,000円の商品を営業用見本品として使いました。仕訳に使う金額と貸方科目は何ですか。
公認会計士短答式試験 / 財務会計論
商品売買と棚卸資産の基本を説明し、問題に答える
商品売買と棚卸資産
公認会計士短答式試験 / 財務会計論
商品の他勘定振替
商品売買と棚卸資産
期中:事業用消耗品としての自家消費
原価8,000円の商品を事業上の消耗品として使います。個人事業主の私的な引出しではありません。
借方
貸方
期中:取引先への贈答
原価5,000円の商品を取引先へ贈り、本設例では交際費とする指定です。税務上の損金算入は扱いません。
借方
貸方
期中:火災による商品の焼失
原価25,000円の商品を火災で失い、本設例では特別損失として表示する指定です。保険金の認識は含めません。
借方
貸方
決算整理:期首商品の振替
期首商品30,000円、当期仕入370,000円は既に記録済みです。期首商品を仕入へ加えます。
借方
貸方
決算整理:期末商品の繰越し
他勘定振替を反映した実際の期末商品原価70,000円を繰り越します。仕入勘定の最終残高は280,000円です。
借方
貸方
借方は用途や発生原因に対応する費用・損失、貸方は仕入です。見本品に使った原価を見本品費へ移すと、当期費用が新たにもう一つ重なるのではなく、仕入の中にあった原価が別の区分へ移ります。
本例では三分法による決算整理前の取引を扱います。商品を継続的に資産勘定で記録する方法や、決算時に既に期末商品を減額した場合には、どの勘定に対象原価が残っているかを確認する必要があります。記帳方法や処理済みの段階を無視して、仕入と商品を両方減らさないようにします。
贈答品の費用科目は使途によって確認します。数値例では取引先への贈答を交際費とする条件を明示していますが、無償の払出しをすべて同じ費用科目にするという意味ではありません。
期首商品20,000円、振替前の当期仕入180,000円、期末商品24,000円、見本品使用原価6,000円でした。正しい売上原価はいくらですか。他勘定振替を忘れると、売上原価はどれだけずれますか。
原価4,000円で、借方に見本品費、貸方に仕入を計上します。売価6,000円の売上や、差額2,000円の販売益は計上しません。
正しい売上原価は170,000円です。他勘定振替を忘れると176,000円となり、6,000円過大です。さらに見本品費だけを追加して仕入を減らさなければ、同じ原価を二重に費用化してしまいます。
販売以外の商品払出しは、その原価を仕入から用途別の費用・損失へ振り替えます。何をいくら使ったか、仕入から既に控除済みか、どこに表示するかを分けて確認すれば、販売原価と別用途の費用を重複させずに整理できます。
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