誤謬訂正の基準|修正再表示と見積り変更を区別する
過去の財務諸表の誤りを発見した際に、当期の通常取引と区別する考え方を整理します。訂正の対象期間と比較情報が中心です。
執筆:LavaCount執筆者チーム
解説の対象時点:2026年4月1日
情報を確認した日:2026年10月28日
過去の財務諸表の誤りを発見した際に、当期の通常取引と区別する考え方を整理します。訂正の対象期間と比較情報が中心です。
執筆:LavaCount執筆者チーム
解説の対象時点:2026年4月1日
情報を確認した日:2026年10月28日
目的から適用までの読み順
どの取引・事象に適用するか
過去の財務諸表の誤りを発見した際に、当期の通常取引と区別する考え方を整理します。訂正の対象期間と比較情報が中心です。
基準が求める主要な原則
基本的な取扱い
誤謬には、データ処理の誤り、事実の見落とし、会計方針の適用誤りなどが含まれます。意図的でなかったから誤謬ではない、とはいえません。過去の財務諸表を作る際に入手可能な情報を、使用しなかったり誤用したりしたかを検討します。 過去の誤謬がある場合は、重要性や適用基準を踏まえ、修正再表示の取扱いを確認します。今期見つけたという発見日だけで、全額を今期の売上や費用へ加減するとは限りません。
前年の計上漏れを今年見つけても、すべて今年の費用にしてよいとは限りません。まず、前年の財務諸表を作成したときに利用できた情報を使わなかったのか、それとも今年になって新しい事実が生じたのかを確かめます。前者は誤謬、後者は見積りの変更や当期の取引などを検討する出発点になります。
誤謬には、集計・計算の間違いだけでなく、事実の見落としや会計方針の誤った適用も含まれます。故意でなかったことや、後から請求書を見つけたことだけで、誤謬の訂正が不要になるわけではありません。重要な過去の誤謬は、修正再表示によって比較情報等へ反映します。
前期中に修繕サービスを受け、請求書も前期決算の作成時に入手できたのに、修繕費と未払費用を計上していませんでした。金額は10万円で、重要な過去の誤謬として訂正する条件とします。税効果や他の誤りはなく、当期にはこの代金を支払っています。
前期の項目 | 訂正前 | 訂正後 |
|---|---|---|
公認会計士短答式試験 / 財務会計論
簿記の基礎と決算の基本を説明し、問題に答える
簿記の基礎と決算
企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
第4項、第21項〜第22項
1. 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
企業会計基準委員会
該当箇所: 第4項(誤謬の定義)、第21〜22項(過去の誤謬の訂正・開示)
出典を開く1,000,000円 |
900,000円 |
この修繕に関する未払費用 | 0円 | 100,000円 |
期末利益剰余金 | 4,000,000円 | 3,900,000円 |
前期の費用を10万円増やすと、前期利益と利益剰余金は10万円減り、負債は10万円増えます。現金は前期にまだ払っていないため、この訂正自体では前期末の現金を減らしません。損益だけ直して負債を残さない、又は負債だけ増やして純資産をそのままにする訂正では、財務諸表がつながりません。
当期の出発点にも、訂正後の前期末残高を引き継ぎます。税効果を省略した仕訳の関係は、当期期首に利益剰余金100,000円を借方、未払費用100,000円を貸方に置く形で表せます。実際の帳簿処理と比較財務諸表上の修正を区別し、対象期間に合わせて整理します。
時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
当期期首の残高調整 | 利益剰余金100,000円 | 未払費用100,000円 |
当期の支払い | 未払費用100,000円 | 現金100,000円 |
当期の支払いは、期首からある負債を消す取引です。同じ修繕費を当期にも計上すると、前期と当期で二重に費用を負担したことになります。もし支払い時に修繕費として記帳済みなら、期首残高の修正と併せて、当期に誤って計上した修繕費を取り消す調整も必要です。現金を再び動かすのではありません。
事実関係 | 検討する扱い | 判断の理由 |
|---|---|---|
前期に届いていた請求書を見落とした | 過去の誤謬の訂正 | 当時利用できた情報の不使用 |
前期には合理的だった回収見込みが、当期の新たな災害で悪化した | 当期の評価・見積り変更等 | 新しい状況を反映するため |
正当な理由で在庫の評価方法を変更する | 会計方針の変更 | 採用する原則・手続の変更 |
結果が予想と違ったというだけで、過去の見積りが誤謬だったとはいえません。判断時点の契約、取引記録、入手可能な情報を調べます。決算日後に判明した事情なら、いつ発生していたかを整理し、後発事象の扱いとの関係も確認します。
修正再表示では、表示する過去の財務諸表へ誤謬の影響を反映します。表示する最も古い期間より前に生じた影響は、その期首の資産・負債・純資産へつなげます。どの期間に、どの科目へ、いくら影響したかを一覧にし、比較情報と当期の出発点が一致するかを確かめます。
注記では誤謬の内容と修正額等を整理します。過去の資料がない場合の扱いも、単に作業に時間がかかるから省略するという話ではありません。重要性、訂正対象の期間、修正額を求められる範囲を、それぞれ根拠とともに判断します。
問題1:上の例で、当期に支払った10万円を当期修繕費のままにし、前期の比較情報も修正しました。何が問題ですか。
解答:同じサービスを前期と当期の両方で費用にしてしまいます。当期の費用計上を調整し、期首から引き継いだ未払費用の支払いとして整理します。
問題2:前年に適切に見積もった設備の残存利用期間を、新しい技術情報に基づき今年短く見直しました。前年の計算結果が変わるため、必ず誤謬訂正になりますか。
解答:必ずではありません。当時の見積りが合理的で、新しい情報を反映する変更なら、見積り変更の取扱いを検討します。過去の情報の見落としと区別します。