貸倒引当金の会計処理|債権区分・繰入・戻入と表示
一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に応じた貸倒見積りと、差額補充法による繰入・戻入を整理します。債権区分と損益表示の区分を混同せず、期末必要額を仕訳へつなげます。
執筆:LavaCount執筆者チーム
情報を確認した日:2026年10月24日
一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に応じた貸倒見積りと、差額補充法による繰入・戻入を整理します。債権区分と損益表示の区分を混同せず、期末必要額を仕訳へつなげます。
執筆:LavaCount執筆者チーム
情報を確認した日:2026年10月24日
貸倒引当金は、期末に残る金銭債権について、回収できないと見込まれる部分を反映するための評価性引当金です。将来の貸倒れに備えた現金を別に積み立てる処理ではなく、債権の帳簿価額と損益を調整します。
まず債務者の状況から債権を区分し、区分に適した方法で期末必要額を求めます。その後、対応する決算整理前の貸倒引当金残高と比較して、当期の繰入額又は戻入額を決めます。期末必要額と当期費用は同じとは限りません。
期末に未回収の金銭債権がある
実際の貸倒れの処理とは区別して、期末残高の回収可能性を評価する場面です。
債務者の状況に応じた債権区分を決める
一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に区分します。
債権又は設定対象ごとの既存引当金残高を確認する
期中の取崩し等を反映した決算整理前残高を、同じ設定対象の必要額と比較します。
担保・保証の回収見込額等が与えられている
見積率は設例の指定です。担保と保証による回収見込額を重複して差し引きません。
一般債権は、債務者の経営状態に重大な問題が生じていない債権です。貸倒懸念債権は、経営破綻には至っていないものの、弁済に重大な問題があるか、その可能性が高い債権です。破産更生債権等は、債務者が経営破綻又は実質的な経営破綻に陥っている債権です。
破産更生債権等に該当する場合は、売掛金や貸付金などから同区分へ振り替えて評価します。区分を変えただけで債権全額を貸倒損失にしたり、債権を帳簿から取り除いたりはしません。
一般債権では、過去の貸倒実績率などの合理的な基準を用いて必要額を求めます。貸倒懸念債権の財務内容評価法では、債権額から担保の処分見込額と保証による回収見込額を控除し、残額について債務者の財務内容を考慮して見積もります。破産更生債権等では、この控除後の残額全体が貸倒見積高です。
貸倒懸念債権について元利金の回収を合理的に見積もれる場合は、キャッシュ・フロー見積法を用いることがあります。将来の回収額を当初の約定利子率で割り引き、債権の帳簿価額との差額を引当金とします。条件変更後の利率や任意の市場利率へ置き換えません。
差額補充法の調整額 = 期末必要額 - 対応する決算整理前残高
この差が正なら繰入、負なら超過分の戻入です。異なる債権区分や設定対象の引当金残高を無条件に流用せず、期中の貸倒れによる取崩しなどを反映した残高と比較します。
一般債権Aの不足額繰入
借方
貸方
貸倒引当金は債権から控除する評価勘定であり、貸借対照表の負債ではありません。破産更生債権等は原則として投資その他の資産に区分しますが、短期に回収されることが明らかな部分などは条件を確認します。
繰入額の損益区分は、債権が一般債権か破産更生債権等かではなく、債権の発生原因によって判断します。営業債権に関する繰入は販売費及び一般管理費、営業外の債権に関する繰入は営業外費用が基本です。得意先等に対する営業目的の貸付金もあるため、「貸付金」という科目名だけで機械的に区分しません。
貸倒引当金を対象債権から直接控除して純額表示する場合は、その控除額を注記する方法があります。総額と控除額を本表で示す方法とは表示のしかたが異なりますが、債権の回収可能額を表す目的は共通です。貸倒見積りの方法を読む際には、評価対象の区分も合わせて確認します。
破産更生債権等では、一定の貸倒見積高を債権から直接減額する方法もあります。引当金を設定する方法と同じ減額を二重に行いません。
実際に回収不能となった債権を消す処理や、償却済みの債権を回収する処理は、期末の見積りとは別です。それらは貸倒れ・償却債権取立益の会計処理で扱います。
必要額をそのまま当期繰入額とする誤りがあります。既存の引当金が残っていれば、不足分だけを追加します。また、破産更生債権等では、担保等による回収見込額を控除した残額へ、さらに任意の見積率を掛けないようにします。
損益表示を信用リスクの高低で決めるのも誤りです。営業上発生した債権は、破綻したからといって当然に営業外債権へ変わるわけではありません。
本記事は2026年10月改正を適用する前の日本基準による学習例です。改正基準は原則2030年4月1日以後開始年度、早期適用は2027年4月1日以後開始年度からです。予想信用損失モデル等の適用後の取扱いと区別してください。
計算図鑑の「貸倒実績率」「財務内容評価法」「キャッシュ・フロー見積法」「差額補充法」で必要額を求め、このページで繰入・戻入、債権区分の振替、表示へつなげます。
以下のA・B・Cは互いに重複しない営業債権の設定対象です。担保と保証の回収見込額にも重複はなく、いずれも差額補充法を用います。
Aは一般債権2,000,000円、見積率2%、既存引当金25,000円です。必要額40,000円から既存残高を差し引き、15,000円を繰り入れます。
Bは貸倒懸念債権500,000円、担保処分見込額150,000円、保証なし、控除後残額への見積率40%、既存引当金100,000円です。必要額140,000円、不足額40,000円です。
Cは破産更生債権等300,000円、担保・保証による回収見込額110,000円、既存引当金170,000円です。必要額190,000円、不足額20,000円です。元の売掛金を破産更生債権等へ振り替えてから評価します。
必要額合計は370,000円ですが、当期繰入額合計は75,000円です。Aを洗替え法で処理する場合も、25,000円を戻して40,000円を設定するため、純費用は15,000円で変わりません。
貸倒懸念債権の回収見込みを変更せず、前期末の回収額の現在価値400,000円に対して、当初約定利率5%で1年が経過しました。その間の回収はありません。時の経過による調整を受取利息として処理する場合、仕訳はどうなりますか。
公認会計士短答式試験 / 財務会計論
貸倒引当金の基本を説明し、問題に答える
貸倒引当金
公認会計士短答式試験 / 財務会計論
貸倒引当金の会計処理
貸倒引当金
貸倒懸念債権Bの不足額繰入
借方
貸方
Cを破産更生債権等へ振替
借方
貸方
Cの不足額繰入
借方
貸方
CF見積法・時の経過
借方
貸方
必要額を超える引当金の戻入
借方
貸方
繰入では、借方に貸倒引当金繰入、貸方に貸倒引当金を計上します。戻入では、借方に貸倒引当金、貸方に貸倒引当金戻入を計上します。
洗替え法では、対応する既存引当金をいったん戻し、必要額を改めて設定します。同じ条件なら、差額補充法と期末引当金残高及び純損益は一致します。ただし、両方の方法の仕訳を同時には行いません。
CF見積法で、回収見込みを変更せず時の経過によって現在価値が増えた場合は、引当金を減らし、受取利息として処理する方法があります。回収可能性の改善による通常の見積変更と、時の経過による利息相当額を区別します。
現在価値の増加額20,000円だけ引当金を減らします。借方は貸倒引当金20,000円、貸方は受取利息20,000円です。回収見積りの変更ではなく、時の経過による利息相当額です。
超過額6,000円を戻し入れます。借方は貸倒引当金6,000円、貸方は貸倒引当金戻入6,000円です。期末引当金残高は12,000円となります。
2026年10月24日確認。本文の設例と確認問題は、論点の理解のために独自に作成しています。計算は明示した期間・方法・投入条件・丸め方を前提とします。
登録せずに試す