会社法108条|種類株式の内容と設計上の制限
会社法108条が認める9つの種類株式の内容を、経済的権利、議決権、譲渡・取得、機関の決定に分けて解説します。107条との違い、定款記載、株主平等、種類株主保護とのつながりも整理します。
執筆:LavaCount執筆者チーム
解説の対象時点:2026年10月24日
情報を確認した日:2026年10月28日
会社法108条が認める9つの種類株式の内容を、経済的権利、議決権、譲渡・取得、機関の決定に分けて解説します。107条との違い、定款記載、株主平等、種類株主保護とのつながりも整理します。
執筆:LavaCount執筆者チーム
解説の対象時点:2026年10月24日
情報を確認した日:2026年10月28日
原文から要件・効果までの読み順
法令上の文言をそのまま確認します
法令本文
株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。 ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。 一 剰余金の配当 二 残余財産の分配 三 株主総会において議決権を行使することができる事項 四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。 五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。 六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。 七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。 八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。 2 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。 一 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容 二 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容 三 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項 イ 株主総会において議決権を行使することができる事項 ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件 四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項 五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項 イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項 ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法 六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項 イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項 ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法 七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項 イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法 ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件 八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項 イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項 ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件 九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項 イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数 ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数 ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項 ニ イからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項 3 前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。 この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
条文の意味を平易な言葉で整理します
種類ごとの権利内容を設計する制度が108条です。種類株式を設けることと、その権利を行使・変更する際の手続は別の段階になります。
この規定が置かれている理由
一律の株式だけでは調整しにくい、経済的な利益配分と経営への関与を柔軟に設計するための制度です。その一方で、異なる種類の株主の利益が衝突し得るため、定款による明示や種類株主総会などの保護手続が必要になります。
会社法108条は、配当、議決権、取得に関する権利などについて、内容の異なる株式を種類ごとに設計するための規定です。A株・B株という呼び名だけでなく、どの法定事項をどう変えるかを定款へ定めます。経済的な利益の分配と、会社の意思決定への関与を分けて考えると、九つの事項を整理しやすくなります。
号 | 内容の違いを設ける事項 | 着眼点 |
|---|---|---|
1 | 剰余金の配当 |
公認会計士短答式試験 / 企業法
株式の内容と株式譲渡の基本を説明し、問題に答える
株式の内容と株式譲渡
公認会計士短答式試験 / 企業法
会社法108条
株式の内容と株式譲渡
会社法 異なる種類の株式
第108条
1. 会社法(e-Gov法令検索)
デジタル庁 e-Gov
該当箇所: 第108条第1〜3項、第105条第2項、第107・109・111・115条、第322条以下。
出典を開く優先順位、配当額等
2 | 残余財産の分配 | 清算時の分配順位・内容 |
3 | 議決権を行使できる事項 | どの議題で投票できるか |
4 | 譲渡制限 | 取得に会社の承認を要するか |
5 | 取得請求権 | 株主が会社へ取得を請求する |
6 | 取得条項 | 一定事由が生じたとき会社が取得する |
7 | 全部取得条項 | 所定の手続で当該種類の全部を取得する |
8 | 種類株主総会の追加承認 | 通常の決議等に加えて、その種類の承認も要する |
9 | 取締役・監査役の種類株主総会での選任 | その種類が役員選任へ関与する |
取得請求権は株主からの請求、取得条項は定めた事由による会社の取得です。似た名称でも誰のどの行為から始まるかが違います。また、定款へ内容を設計する段階と、実際に取得を実行する段階の手続も分けます。
第8号では、株主総会や取締役会等の決議に加え、特定の種類株主総会の決議も必要とする事項を設計します。たとえば一定の重要事項を、通常の機関決定だけでは進められないようにする仕組みです。第9号は、取締役又は監査役をその種類株主総会で選任する内容です。追加承認を得ることと、役員を選ぶことを同じ権利と考えません。
比較点 | 第8号 | 第9号 |
|---|---|---|
中心となる作用 | 特定事項へ追加の承認を要求 | 取締役・監査役を選任 |
会社類型の確認 | 各制度・関連条文の要件を確認 | 公開会社・指名委員会等設置会社には禁止 |
誤りやすい理解 | 通常の機関決定が不要になる | 公開会社は種類株式全般を発行できない |
108条1項ただし書の禁止は第9号を対象とします。これを、公開会社が優先配当株式や第8号の内容を含む種類株式を一律に発行できないという意味へ広げません。逆に、非公開であれば関連する機関構成や他の要件を確認しなくてよいということでもありません。
甲社が、普通株式と、配当を優先する一方で一部の議題では議決権を行使できないA種類株式を定款へ設けるとします。配当条件だけでなく、議決権を行使できる事項、発行可能種類株式総数など、種類の内容と枠を具体化します。
種類ごとに適法な権利内容が異なるため、普通株式とA種類株式の配当額が違うことだけで直ちに株主平等原則違反にはなりません。一方、同じ内容・数の株式を持つ株主を、理由なく別々に扱ってよいわけではありません。109条の平等と組み合わせて理解します。
公開会社の発行済株式総数が1,000株、そのうち議決権制限株式が600株になった例を考えます。割合は600株÷1,000株=60%で、発行済株式総数の2分の1を超えます。115条により、直ちに2分の1以下にするための必要な措置をとる問題になります。
分母は定款上の発行可能株式総数ではなく、発行済株式総数です。また、2分の1を超えた場合の措置の規律を、当然にすべての株式発行が無効になるという説明へ置き換えません。議決権を行使できる事項が限られる株式について、115条の対象となる定義も確認します。
108条2項では、各種類の内容と発行可能種類株式総数を定める事項を確認します。一定の事項については3項の要綱と決定方法の定めも関係します。後に種類を追加し、又は内容を変える場合は、111条や322条以下による種類株主の保護を併せて検討します。
全部の株式に一律の内容を付ける107条との違いも重要です。配当と残余財産分配の双方を全く与えない定款の定めには105条2項の制約があります。柔軟な設計を認める制度でも、株主の基本権や個別の手続を全面的に外せるわけではありません。
問題1:公開会社が第9号の種類株式を発行できないので、優先配当株式も一切発行できませんか。解答は違います。ただし書が禁じる内容を特定し、ほかの内容の制限と分けて判断します。
問題2:定款で二種類を設計していても、現時点では一種類しか発行されていなければ、必ず種類株式発行会社ではないといえますか。解答:発行済みの状態だけでなく定款による設計を含めて判断します。
問題3:公開会社で議決権制限株式400株、発行済株式総数1,000株の場合、割合はいくらですか。解答は40%です。この数量だけなら2分の1は超えていません。ほかの要件は別に確認します。